花夜野 |
「おーい!雷―明―!天―晴―!」 |
天晴 |
「花夜野―、こっちだよー」 |
花夜野 |
「はあはあ、遅くなってごめんね。あーちゃん、だいぶよくなってぐっすり眠ったから、
先生にお願いして出てきちゃった」 |
雷明 |
「暁なんてほっとけ!風邪といってもあいつのは半分仮病みたいなもんだ!」 |
花夜野 |
「雷明…ひどいよ」 |
天晴 |
「花夜野をひとりじめしたい病だよ、暁は」 |
花夜野 |
「天晴まで…あーちゃんがかわいそう。あんなに苦しんでたのに」 |
天晴 |
「(小声で)僕、布団の中からピースしてるの見た」 |
雷明 |
「(小声で)俺は花夜野におかゆを食べさせてもらって、ニヤけた顔をしているのを見た」 |
花夜野 |
「…あーちゃん、ハアハアしてて、本当に苦しそうにしてたんだよ。
大丈夫かな…置いてきちゃって寂しがってないかな」 |
天晴 |
「(小声で)騙されてる…」 |
雷明 |
「(小声で)ああ、完璧にな」 |
花夜野 |
「やっぱり僕、あーちゃんの側についてあげてた方がよかったかな。ねえ雷明、天晴、どう思う?」 |
天晴 |
「(優しげに)大丈夫だよ。逆に花夜野に風邪がうつったりしたら、暁だって困るし。
何よりずっと看病してると疲れちゃうしね。少しリフレッシュして、花夜野が笑顔でないと暁も悲しむよ」 |
花夜野 |
「天晴…ありがとう」 |
天晴 |
「それより…(匂いをかぐ仕草をして)くんくん、何だかいいにおいがするね」 |
雷明 |
「(匂いをかぐ仕草をして)ふんふん、そうだな。いいにおいがするな」 |
花夜野 |
「あっ、そうそう。僕、お弁当作ってきたんだよ。先生に習って初めて作ったんだ。
祐君も手伝ってくれたんだよ。みんなで一緒に食べようね」 |
雷明 |
「弁当!」 |
天晴 |
「卵焼きある?卵焼き!」 |
雷明 |
「肉!肉は入ってるか!」 |
花夜野 |
「ふふ、卵焼きもお肉もおにぎりも、色んなものたーくさん作ってきたよ。おいしくできてるといいけど」 |
天晴 |
「やった!卵焼き!」 |
花夜野 |
「いっぱいあるからね。みんなで食べようね」 |
雷明 |
「花夜野の手作り弁当、か…楽しみだな」 |
花夜野 |
「ふふ、みんなで、あそこの桜の木の下で食べようか」 |
天晴 |
「ワクワクだね」 |
雷明 |
「ドキドキだな」 |
花夜野 |
「…あんまり期待されると、恥ずかしいけど。それでは…じゃーん!どうぞ!」 |
天晴 |
・雷明「…うっ!!」 |
花夜野 |
「これがね、天晴の好きな卵焼きで、こっちが雷明の好きなお肉。魚もあるよ」 |
天晴 |
「(恐る恐る)…花夜野、この卵焼きに入ってるブツブツした黒い物は何かな?」 |
花夜野 |
「あっそれはね、カエルの卵を混ぜて焼いてみたの!ダブル卵で栄養があると思って!」 |
天晴 |
「(小声)ダブル卵、ね…確かに…」 |
雷明 |
「(恐る恐る)…花夜野、この肉に巻いてある緑のものは何だ?」 |
花夜野 |
「それはね、先生はインゲンを巻いてたんだけど、インゲンがなかったから、イナゴを巻いてみたんだ。
色も似てたし」 |
雷明 |
「(小声)イナゴか…イナゴな…歯ごたえがあっていいかもな…」 |
天晴 |
「(恐る恐る)…このおにぎりの周りにへばりついているベトベトの黒っぽいものは?」 |
花夜野 |
「あ、それはチョコレート!先生は海苔を使ってたんだけど、僕、チョコレートが好きだから
おいしいかと思ってチョコをつけてみたんだ」 |
雷明 |
「(小声)…海苔でいい、海苔で」 |
天晴 |
「先生、もっとちゃんと教えてやってくれよ…」 |
花夜野 |
「どんどん食べて!はい、雷明、あーん?」 |
雷明 |
「…うっ!」 |
花夜野 |
「(悲しそうに)…雷明、僕の作ったお弁当、食べたくなかった?」 |
雷明 |
「そんなことないぞ!うまそうだ!」 |
花夜野 |
「ほんと?じゃあ、雷明の好きなお肉ね。あーん」(お箸を突き出して) |
雷明 |
「…う、ううっ…あ、あーん」(嫌そうに観念して食べる振りをする) |
花夜野 |
「…どう?おいしい?」 |
雷明 |
「…ぐっ、ごほっげほっ、ごほごほっ!」 |
花夜野 |
「(心配そうに)…雷明、おいしくなかった?」 |
雷明 |
「(苦しげに)ごほっごほっ、い、いや、うまいぞっ!うぐっ!」 |
天晴 |
「(小声で)…あーあ、無理しちゃって」 |
花夜野 |
「あ、天晴は卵焼き好きだよね!卵焼き、結構うまくできたと思うんだ」 |
天晴 |
「えっ、いや、僕?僕は…あっ、ほらっ、雷明がすごーくおなかすいてるっていうから、
後からゆっくり食べるよ!」 |
雷明 |
「あっ、天晴、お前!」 |
花夜野 |
「たくさん作ってきたから大丈夫だよ!天晴にも僕のお弁当、食べてほしいな」 |
天晴 |
「花夜野…」 |
花夜野 |
「はい、天晴、あーん?」 |
天晴 |
「うう…あ、あーん…うぐっ!」 |
花夜野 |
「天晴、おいしい?」 |
天晴 |
「ぐぐぐっ…ううっ…げほげほっ、ううっ…!」 |
花夜野 |
「天晴、どうしたの?お茶飲む?それともおいしくなかった?」 |
天晴 |
「…ううっ、お、おいしいよ!この何ともいえないプチプチというかぬめぬめした食感が、斬新だね!」 |
花夜野 |
「そう?よかった!もっとあるから、いっぱい食べてね!」 |
雷明 |
「…これはあれか、暁の呪いか?」 |
天晴 |
「…ものすごい破壊力だよ」 |
雷明 |
「無事家に帰れるといいな…」 |
天晴 |
「そうだね…あはは、あはははは!」 |
雷明 |
「わははははははは!」 |
花夜野 |
「ふふ、二匹とも楽しそうでよかった!どんどん食べてね!」 |
雷明 |
「わはは、うまいぞうっ!」 |
天晴 |
「わあ、このおにぎり甘くてとってもおいしいよ!」 |
花夜野 |
「お花見って楽しいね。雷明、天晴!…暁も一緒に来れればよかったのにね」 |