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Recording Report

八月七日を探して 収録レポート


4月中旬、都内スタジオにてドラマCD「八月七日を探して」の収録が行われました。

収録当日。スタジオに次々とキャストの方々が集まって来られます。
軽く読み合わせをしたり、世間話をしたりと仲の良いキャストの方揃いということで、和気あいあいとしたご様子でした。
キャストの方々が揃ったところで原作者の樋口美沙緒先生よりご挨拶が行われました。
「自分の書いた作品が初めてのドラマCDになります。どうぞ宜しくお願いします」と緊張気味の先生。
リラックスしてもらおうとプロデューサーが「この方達に任せておけば大丈夫ですよ」と言った言葉に、

羽多野さん 「プレッシャー与えないでくださいよー…!」
全員 「(笑)」
と、スタジオ内は笑い声に包まれました。

収録開始。まずはテストで数シーンを演じていきながら、それぞれのキャラクターを設定していきます。

水沢涼太役の寺島拓篤さん。
高校2年生ということで若さを意識して声のトーンを高めに、そして心に何かを抱えている雰囲気も滲ませつつ…
といった演技を披露してくださいました。
基本のトーンはOK、さらに要所要所で出てくる回想シーン・中学生時代の明るい涼太との差をつけるために、
現在の涼太については物憂げな雰囲気を前面に出して頂き、あえて高校生という若さよりもセンシティブさを意識して、
少し落ち着いたラインで演じて頂くことになりました。

二宮恭一役の羽多野渉さん。
陸上部のキャプテンで生徒会副会長も務める人物ということで、真面目でなんでもできるしっかりとした雰囲気を出して演じてくださいました。
基本ラインはこのままで、ぶっきらぼうな部分や少々とっつきにくい性格をより表すために、無骨さをプラスして演じて頂くことになりました。

北川和馬役の野島裕史さん。
生徒会長といった役職ながらも飄々とした感じのキャラクター。
少し軽めのつかみどころのない北川ですが、涼太に対しては優しい空気がふわっと広がるように、親しみを込めて演じて下さいました。
先生もイメージぴったりということで、テストのまま進めて頂くことになりました。
さらに椎名や真鍋など、その他のキャラクターの設定も終わり、いよいよ本番がスタート。

物語は学校の階段から落ちた涼太が、病院で目を覚ますシーンから始まります。
なぜ自分が病院にいるのか疑問に思う気持ちと、どこからともなく湧き上がる不安な気持ちを絶妙な加減で演じられる寺島さん。
なぜか三ヶ月分の記憶がないことに戸惑い、考えれば考えるほど徐々に焦燥と不安が込み上げ、混乱する様子を細やかな演技で表現してくださっています。
さらに、事故後、毎日のように男に犯される夢を見るようになった涼太。モノローグでそんなショッキングな風景を語るシーンでは、
寺島さんが淡々としたトーンの中に揺れ動く涼太の心情を込めて演じて下さっています。
寺島さんの繊細な演技に冒頭のシーンから一気に物語の世界へと引き込まれます。

涼太と恭一の中学生時代の1シーン。ただ好きな陸上をやり、そばには当たり前のように恭一がいて…そんな純粋に毎日を楽しんでいた涼太。
鬱々とした現在の涼太とは違い、明るく無邪気な14歳の頃を高いトーンで見事に演じきる寺島さん。その声のトーンの演じわけはさすがです!
そして、「わー!中学生…!」と不安げだった羽多野さん。不器用な性格は変わらないけれども、年齢を意識して演じて下さったのですが、
こちらも絶妙なさじ加減で、無骨な雰囲気を残したまま、どこか初々しい恭一の中学生時代を的確に演じられています。

中学時代の修学旅行で、好きな女の子の話をする涼太たち。そこで恭一に好きな人がいる事を初めて知り、ショックを受ける涼太。
恭一の好きな相手は誰なのか気になり、直接本人に問いかけるのですが…。
普段あまり気持ちを表に出さない恭一が「本気で大西が好きなのか?」と逆に問いかける一言に、恭一の苦しい心情が痛いほど伝わってきます。

「俺はお前が好きなの。…けど、別に返事は要らない」となんでもないように涼太に自分の気持ちを伝える恭一。
羽多野さんが、恭一の言葉にできない複雑な感情を台詞の端々に乗せて演じられ、その苦々しい、悲しみさえ秘めた想いは必聴です。
大きく感情を表に出すことがない分、恭一の心情一つ一つを丁寧に台詞に込めなくてはならないため、繊細な演技が要求されましたが、
そこはさすがの一言! 丁寧なお芝居で恭一というキャラクターの魅力をより引き出してくださっています。

また、そんな恭一の思いに衝撃を受け、思い悩む涼太。溌剌として明るかった涼太が、恭一の想いに触れ、
どんどん思い悩んでいく姿を寺島さんが熱演して下っています。
「俺のこと好きなのに、返事はいらない?」一見なんでもないように見える恭一に振り回され、涼太の心の中もかき乱されて…。
戸惑い、混乱、悩み。原作でも細やかに表現されている涼太の心情が、寺島さんのモノローグからビンビン伝わってきて、
思わず聴いているこちらがもどかしくなってしまうほどです。

涼太と恭一、二人の関係にヒビを入れる重要なファクターである中学時代の回想部分を
見事に演じられたお二人に、プロデューサーからの「今の凄くよかったよ!」という言葉がかけられ、
羽多野さん 「(幼い可愛らしい声で)はい! ありがとうございます」
寺島さん 「(爆笑)」
と笑いを誘いつつも、プロデューサーからのOKの声にほっと一安心されたご様子でした。
中学生、高校生と、そして数ヶ月前、現在。時間経過にあわせて、お二人が繊細にキャラクターの心の移り変わりを表現して下さっていますので、
ぜひ耳をこらして聞いて頂ければと思います。


一方、もう一人のメイン所・北川は、涼太に好意を寄せ、恭一と涼太の関係をも左右する重要なキャラクターです。
ぽんぽんとテンポの良い台詞回しで北川を演じてくださる野島さん。初登場シーンから、北川の色鮮やかな魅力が存分に表れています。
昔所属していた陸上部の顧問・長野から嫌味を言われ、カッとなる涼太。そこに現れた生徒会長・北川が涼太を助けてくれるのですが――。
さらっと教師の言葉を流しつつ笑顔で言い返すさまや、恭一に対しては少し意地悪く、涼太に対しては優しく気遣う気持ちを滲ませて…と、
野島さんが北川のコロコロ変わる表情を見事に表現して下さっています。
さらにところどころで見せる甘いささやきは必聴です。普段のおちゃらけた姿から一変、涼太を口説くシーンが本当にかっこいいです!
要所要所でドキっとするような色気や、大人の雰囲気を滲ませる北川のギャップに心を掴まれることは間違いありません。

特に聞き所なのが、不安な気持ちに押しつぶされそうな涼太を抱きしめ慰めるシーンです。
包み込むような、暖かな声音で演じられる野島さん。包容力に溢れた優しい北川に、聞いているこちらも思わずホッとさせられます。

そんな北川にどんどん心を許していく涼太の姿を見るたび、焦りと苛立ちを抑えきれない恭一。
涼太との距離をどんどん深めていく北川に敵意むき出しの恭一を、冷たい声で怒りと嫉妬心を乗せて演じられる羽多野さん。
そして、そんな恭一の敵意をわかっていながらも受け流す、精神的に大人で余裕な北川。
口調は相変わらず飄々としていても、笑顔の裏に隠れる本音を野島さんが絶妙なさじ加減で表現されています。
不器用な恭一とは違い、なんでもそつなくこなす北川。対照的な二人のやり取りは、聞き所の一つです!
相反する性格ではあるけれども、涼太を想う気持ちは一緒。どちらも魅力的なキャラクターのため、思わずスタッフブースからは
「どちらも素敵で、選ぶなんてできないな…」といった声が出てしまいました(笑)。


キャストの皆さんの巧みな演技に、順調に収録は進んでいきます。
夢の中の男はいったい誰なのか? 男の正体をつかむために、夢の記憶をたよりに探っていく涼太ですが、
不安や苦悩、夢の男の正体が誰なのか知りたい気持ちと恐怖…。さらには、恭一と北川の間で揺れ動く思い。
色んな感情が渦巻いて、足元がぐらついていて心もとないような、不安定な涼太の複雑な心情を台詞だけでなく息や間などでも表現される寺島さん。
涼太の苦渋の表情が溢れんばかりに伝わってきて、思わず聞いているこちらの胸が締め付けられます。

夢の男と条件の合う恭一と北川…。徐々に明らかになっていく男の正体。
それぞれの魅力的なキャラクターだけでなく、緊迫したストーリーもとても楽しめる展開になっております!

八月七日、涼太にいったい何がおきたのか…? 
夢の男の正体や涼太、恭一、北川の交差する想いはどうなっていくのか…?
原作をすでにお読みの方もまだの人も、このドラマCDを聞き始めたら物語に引き込まれること間違いなし! ぜひお手に取って聞いて頂ければ幸いです。

そして、肌を重ねるシーンでは、バスルームでの切ない場面、涼太と恭一の気持ちがすれ違ったままでのシーンや心が通じあった後での場面など…
できるだけ原作に忠実に、回数も多いですが、何よりどのシーンもそれぞれ熱を入れて演じて頂いています。
特にクライマックスでは、今までのお互いの気持ちが見えない中のラブシーンとは違い、相手を大切にしたい、愛おしくてしょうがないといった
愛情たっぷりのシーンに仕上がっています。本音をすべてさらけだし、相手を気遣うが故のぎこちない二人の行為には思わず胸がきゅんとなること間違いなしです。
ぜひお楽しみに!

以上、キャストの皆さんの熱演により、無事本編が終了となりました。

本編終了後、特典フリートークでは、寺島さん、羽多野さん、野島さんが楽しいお話を繰り広げて下さっています。
寺島さんの進行により、共演のご感想、野島さんは天才な人(笑)、もしもあなたが三角関係状態になったらどうする!?
など、ここでしか聞くことが出来ないお話が詰まっています。
こちらも盛りだくさんの内容になっていますので、皆さんお楽しみに!

樋口先生の書かれた登場人物の繊細な心理描写と魅力的なストーリーを音で表現できるように、こだわりにこだわった収録は、無事終了となりました。
長時間の収録でお疲れにも関わらず、「お疲れ様でしたー!」となごやかにスタジオを後にされたキャストの皆さん。本当にお疲れ様でした!
5月28日発売、『八月七日を探して』。皆さんぜひお楽しみ下さい!!

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